2013/05/13
黒と緑のファンタジア14
木苺のジュースで渇いた喉を潤したハーマイオニーが、ケーキにフォークを入れながら話の続きを始めようとするので、
「ちょっとはぼくにもハリーと話をさせてよ。男の子同士の方が話しやす
いからってぼくに声をかけたんだろ」とロンが口を尖らせて文句を言った。
するとハーマイオニーはむっとした表情で黙った。そういうところは年
相応らしかった。ロンとハーマイオニーの間に走った緊張を解そうとハ
リーが、
「ハーマイオニーの話、ぼくはおもしろかったよ。本で読むよりわかりや
すかったしね。ロンは知ってることだったんだろうけど」と言うとロン
は首を横に振った。
「きみたちが読んでる本って上級用だよ。それにぼくの家はよそからここ
に移ってきたからここの歴史なんかのくわしいことはよくしらないんだ
よ」
「だから、ちょうどいいと思って二人に話してたんじゃないの」とハー
マイオニーが横から口出ししたので、ロンはうんざりした顔になった。
「へえ、ロンのおうちは遠くからここに引っ越してきたんだ。どのあた
り?ぼく、行ったことあるかもしれない。セブルスとあちこち行ってる
からね」とハリーがロンに尋ねると、ロンは急にまじめな顔になった。
それから一呼吸おいて答えた。
「たぶん、きみは行ったことないと思うよ。ぼくたち同い年だろ?」
ハリーが首を傾げると、ロンは声を潜めて二人にしか聞こえない
小声になった。ハリーの緑の瞳とハーマイオニーの茶色の瞳に注目
されてロンはそばかすだらけの顔を赤くしたが少し嬉しそうだった。
「ぼくたち一家はぼくが一歳の時にグリフィンドールの首都から逃
げ出したんだ」
ロンは両親からこの話を人前でしてはならないと厳しく命じられ
ていたので、人に話すのは初めてのことだった。しかし、誰かに話
したい話題でもあった。何故なら個性的な兄たちと妹に挟まれて常
に目立たない存在のロンが、一家の中心として語られる唯一のエピ
ソードなのだ。
「おそろしい予言を信じた悪魔がグリフィンドールの赤ん坊をみな
殺しにしようとした。ううん、本当に殺したんだ」
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