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我輩は黒猫である番外編「夏の思い出」6(終)

「夏の思い出」って、今は冬ですが…。
一応これでおしまいです。
 
 我輩は残りの夏を空調管理の行き届いている
部屋で過ごした。日差しによる思わぬ高温スポ
ットを恐れたジェームズが家中のカーテンを遮光
断熱のものに代えたのだ。
元々暑さが苦手な我輩としては結構なことなの
だが、あまり日光にあたらないと毛皮が湿気る
ような気がする。そのせいか我輩は自分できち
んと毛繕いしているというのに、ポッター一家が
我輩が油断している隙を狙って我輩を濡れタオ
ルで拭くようになった。非常に迷惑である。我輩
の水嫌いを知っているので迅速に清拭は済まさ
れるが、
「さっぱりしたね」と言われても、不愉快なだけで
ある。むしろ油分がとれて毛艶が悪くなってしま
った気がする。
 
「セブルスはね、僕の帰りを待っていたんだと思
うんだ」
これが今回の事件に関してのジェームズの結論
だ。我輩はソファのお気に入りのクッションの上で
寝ているとポッター一家に思われていたが、ちゃ
んと起きて聞いていた。そして我輩は地獄耳であ
る。
「おそらくね、あの窓から僕が帰ってこないかと思
ってずっと見ていたんだよ」
見当違いも甚だしい妄言であるが、ジェームズは
頗る真面目な口調だ。ちなみに我輩がお気に入
りだった窓台は見晴らしがよく、隣接している公園
の借景が楽しめる。冬には池に白鳥が飛来し、我
輩もその優美な姿に狩りの空想なぞすることもあ
った。窓台で日光浴をしている時にジェームズを思
い出すことはないし、公園にいるジェームズを見か
けたこともない。
「やっぱり一人でお留守番だと寂しいのかしら」
ジェームズの戯言を受けてドレアまでくだらないこと
を言い出した。
「しかし、セブちゃんは人嫌いだよ」
チャールズは大抵ドレアに賛同するというのに珍し
く反論した。
「あら、そうでしたわね」とドレアは納得したが、
ジェームズは、
「他人は嫌いでも僕は別だよ。セブルスは寂しが
り屋なんだ」
と何故か自信満々に断言した。
まったくもってジェームズの思いこみの激しさには
閉口するが、今回の件で我輩の身に何かおこった
場合にはジェームズの心配をする必要があること
が明らかになった。頭の痛い問題ではあるが我輩
は猫であるので、どうすることもできないのである。
 いつのまにか傍にいたジェームズの大きな手が
我輩の背を撫でている。寝たふりをしていた我輩は
目を開けていかにも不満そうにジェームズを見上げ
てやると、ジェームズは嬉しそうに笑ったので、今
日の我輩の仕事はおしまいである。(終)
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我輩は黒猫である番外編「夏の思い出」5

 日光浴をしていた我輩が熱中症で病院送りに
なるという事件の後、ジェームズは日当たりの
良い我輩お気に入りの窓台を封鎖した。
見晴らしのよい窓は厚手のカーテンで締め切ら
れ、我輩が寛げないように邪魔な荷物が置かれ
てしまったのだ。他にもジェームズは我輩の行
動範囲を隈無く点検してまわり、キャットタワー
まで撤去した。上部が思いの外高温になってい
たらしい。我輩としてはたまには自分の限界に
挑戦したくなるし、ジェームズの過干渉から距
離をとりたくなった時は高所が一番なので不
満である。
ジェームズは冬になったら元に戻すといってい
たがどうなることかわからないものだ。 
 不自由になったのはそればかりではない。
実は我輩はチーズが好物なのだが、もちろん
滅多に口にできない。猫には有害なので我輩
を猫可愛がりしているポッター一家もごく稀に
ほんの少量のみしかくれないのだ。猫用チー
ズというものを食べたこともあるが、不味くは
ないがうまくもない代物だった。
ちなみに我輩はチーズも好きだが、燻製の類
も好きで、チャールズがアルコールを嗜んでい
るところにさりげなく近づき、つまみの相伴にあ
ずかっていた。チャールズは我輩の視線の圧
に大抵負けて、
「ちょっとだけだよ」
と我輩の口に美味しい燻製を一欠片くれたも
のだった。
そういうささやかな楽しみが熱中症騒動以
降なくなってしまった。何やら我輩の腎臓を心
配してのことらしい。我輩の視線の圧に弱いチ
ャールズはうちに来た時はチーズはおろかアル
コールも飲まなくなって、紅茶やコーヒーを飲む
ようになった。
それから、たまに嗜んでいたマタタビも興奮する
と脳と心臓に悪いと言ってとんとご無沙汰で、ま
ったく我輩は退屈だ。それからジェームズの過干
渉ぶりにも辟易している。
元から夏場はジェームズの存在自体が暑苦しい
のであまり一緒にいることを避け、我輩は自分の
ベッド、ソファ、ひんやりと涼しい玄関の大理石な
ぞで寝ていた。今回の事件後は、居間に我輩の
ベッドが置かれたのだが、看病と称してジェーム
ズが寝袋に入って傍で転がって寝るようになった。
ブーブー鼾をかいてうるさいし、かと思えば、ふと
夜中に目が覚めるとジェームズの顔が間近にあ
ってぎょっとすることもしばしばあって落ち着かない。
ジェームズのつきまとい行動は我輩が冬毛になる
まで続いたので、まったく気紛れなぞおこすもの
ではないなと我輩はしみじみと身に沁みた。
(続)

我輩は黒猫である番外編「夏の思い出」4

 我輩がドレアとチャールズに至れり尽くせ
りに世話されて本調子には程遠い体調なが
らもいつも通りに過ごしているうちに、先程
寝たばかりの筈のジェームズが目覚めた。
手探りで眼鏡を探していると思ったら、物凄
い勢いで飛び起きたので少し離れたソファで
ドレアにブラッシングされていた我輩は何事
かと驚いたが、ジェームズは我輩のところに
突進してきた。そして、我輩を胸に抱きしめ
ると、
「ごめんね、ごめんね」と繰り返し謝ってきた。
眼鏡ごしにでも目が潤んでいるのがわかる
情けない顔をしている。我輩が熱中症になっ
たことに責任を感じているらしかった。
我輩としてはそこではなく濡れタオルという
おぞましいものに我輩を包んだことと、忌まわ
しき病院に連れて行ったことこそ謝罪してほ
しいところだ。
ジェームズが涙ぐみながらぎゅうぎゅう抱き
しめるので一気に暑苦しく、辛気くさくなって
しまったが、ジェームズの大変意気地なしな
面を知悉している我輩はあまり無碍にすると
かえってややこしくなると判断して軽く爪を立
てて、尻尾でジェームズを打ってやった。ジェ
ームズは我輩の配慮に少しも気づかず、
「いつもよりすごく弱々しい」
なぞと嘆き悲しんだ。ドレアに、
「昨日の今日ですもの。まだセブちゃんも完
全にいつも通りとはいかないわよ」
と慰められていた。ドレアとチャールズから
我輩の熱が下がったことや、食事量その他
詳しい報告を受けたジェームズは、我輩をもう
一度病院に連れていくべきか悩みだしたので
緊急家族会議が開かれた。
ドレアは少し様子を見たらどうかという意見で、
チャールズも同調していたのだが、ジェームズ
は容態が突然悪化したらと思うと心配だが、
我輩の病院嫌いもよく知っているので気持ち
が揺れていた。
我輩は二日続けて病院に行くなぞまっぴらな
のでどこかに隠れようと思ったのだが、ジェー
ムズにしっかりと身体を捕まれて動けないので
苛々した。結局、ドレアの意見が通り、しばらく
様子が見られることになったが、ジェームズに
一日中ずっとつきまとわれることになり、孤独を
愛する我輩は大いに閉口した。(続)

◆拍手してくださった方々、どうもありがとうございます!

プロフィール

樹里

Author:樹里
ハリポタのスネイプ教授が
大好きです。わりと腐話が
多いのでご注意ください。
本や漫画の感想も書きます。

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